ディズニー映画から学ぶことが多い

 『ルイスと未来泥棒』を子供と一緒に観た。
勧善懲悪ものという言い方があって敵と味方がはっきりしているステロタイプ映画はたくさんあるけれど、この映画は、ポジティブ思考対ネガティブ思考という図式の、ややかわったステロタイプ映画だ。
 子供に言わせるとディズニー映画の中で一番らしい。


 失敗を奨励し過去にとらわれず前進しようという言い方はアメリカの精神、いやシリコンバレーの精神そのものだと思えた。
 失敗を糧にするのは、実は大きな発想転換、意識転換であり、このことに気づくことができる人間はそう多くない、というのが人生技術上最大のポイントだ。周囲の批難に耐え失敗から技術を抽出するのはある種の忍耐力であることをさりげなく教えていく。忍耐力というのは、始めから成功を想定できない以上合理的なものではなく、強い価値観(技術信仰)を持つか、どえらい好奇心を育てるかいずれかだろう。この映画は巨大な好奇心をはぐくみ続けることが人生技術だと説いた。そのためには周囲によき理解者を得なければいけないとさらにポイントを突いた。
 いやあ、子供映画とは思えない。まあディズニーって子供と大人が同次元で楽しむものか。そうだったそうだった。


 抜擢された若い監督は、自分も孤児だったことから孤児である主人公ルイスに特別の思い入れを持って慈愛あふれる構成を実現している。孤児として、捨てた母のことを恋慕し過去にこだわるよりも、未来を構想し巨大なアイデアを実現することで、自分のアイデンティティを築くことだと、自分にいい聞かせるように演出している。


 続編が一度決定しながらピクサーの総監督であるジョン・ラセターより中止することになったと言う(wikipedia記事)。子供映画なんだけれど、なんだか、どこか寂しい印象があるからだろうか。ネガティブ思考の代表である孤児院のルームメイト、グープつまり山高帽の男がある種の大衆像であり、救えずに終わってしまうからだろうか。
 真のハッピーエンディングはグープが過去にもどってボールをとることではなく、グープがポジティブ思考に転換することだったのでないか。