『この世で一番大事な「カネ」の話』の原理原則

西原理恵子さんの『この世で一番大事な「カネ」の話』を読んだ。
境遇は自分に似ていて、貧しさについての違和感は少なかった。60年代に宮崎で育ったので経験も少なからず似ている。片親の悲しさも味わった。


僕の家族も生活の必要上、生活や将来について、現実的であること、つまり収入から歳費を差し引き余剰を残すことを最大限重要視してきたし、カネの中心性は悲しくなるほど理解できる。子供だった頃の感情がふつふつとよみがえる。


だからといってこの本は情感を売るような本ではない。
この本の主題は人生のマイナスな状況からの反転法の原理原則を示すことにある。


一言で言えば、切磋琢磨して専心し働き続けることが、人生を反転させる十分条件になるということだ。


働くことを対価で換算し心理的にも物理的にも制御可能な余剰を創り出す。
金銭の余剰による余裕感覚はどんなに些細な金銭であっても、マイナス状態の人間関係を回復させる。
このことは「みんなでお金を出すときは、人よりも少したくさん出しなさい」という親から得た生活価値観に端的に表現されており、家族での労働価値観形成がマイナス状況からの脱皮の礎になる。
ただ組織的な搾取がある場合はこの条件設定が役に立たず、グラミン銀行のような形で制度として余剰を形成する必要がある。


労働は外部的であるけれど労働価値観を通じて家庭成員の生活価値観が形成され、充実していてなお抵抗力のある人生観が共有されることで一体となって外的環境変化に適応し継続的安定を勝ち取ることできる。


労働そのものを市場価値が高いものにするためには一芸にこだわり収束的改善することだ。
市場価値は、自分で決めるものではなく外部的であり、広範な体験によって価値の中心素材を発見し改善強化することから生まれる。それが余剰の質をあげ、リスクが大きい最低単位の個人であっても価値を揺るぎないものにする。

西原さんの内容を原理化するとこうなる。